・慢性期脊髄損傷者の治療方法
・慢性期脊髄損傷者に必要なリハビリテーションについて
・脊髄損傷者が自立生活を送るために利用できる福祉サービスについて
慢性期脊髄損傷者は痙縮が出現することがあります。
痙縮により、関節可動域制限や疼痛が出現すると、基本動作や日常生活動作に支障をきたす場合があり、ボツリヌス療法などの治療が必要となります。
身体機能の維持のために継続的な筋力トレーニングを必要とする他、自立生活を送るために福祉サービスを利用するのも重要なポイントです。
目次
痙縮の管理と治療
脊髄損傷のような中枢神経疾患では痙縮の症状が出現することが多いです。
痙縮によりクローヌス、異常姿勢、筋の同時収縮、過剰な筋活動などが出現し、それに伴い関節可動域制限、筋の短縮、疼痛、更には歩行障害、ADL障害、QOL障害の原因となります。
では、痙縮の症状を軽減させるためにはどのような治療や管理があるのでしょう。
脊髄損傷の痙縮の治療
脊髄損傷の慢性期において、痙縮が見られることがあります。
痙縮をきたすと、関節可動域が制限され、変形関節となる場合があります。
その結果、移乗動作・歩行動作が困難となったり、更衣動作など日常生活動作能力の低下、オムツ替えなど介助時の問題などが生じるのです。
これらの問題に対して痙縮を軽減させる必要がありますが、ボツリヌス療法やITB療法が治療の選択肢として挙げられます。
また、リハビリテーション治療も行われているため、ご紹介します。
ボツリヌス療法
ボツリヌス療法は痙縮により、疼痛やROM制限、歩行能力低下、ADL能力低下などの問題が生じた場合に行います。
これらの影響が出る一部の筋に対して痙縮コントロールを行えば十分な事も多いです。
しかし、脊髄損傷に対するボツリヌス療法は、我が国では施注量の上限が厳しいため、痙縮が強く認められる場合には適応が難しい可能性があります。
バクロフェン髄注療法(intrathecal baclofen:ITB 療法)
ITB療法は痙縮をやわらげる作用のあるバクロフェンの入ったポンプを腹部に埋め込み、カテーテルで脊髄周辺に直接投与する治療法です。
ITB療法の利点は、薬の投与速度によって効き方を調節できる点です。
また、体の広い範囲に効果が得られる他、かなり強い痙縮に対してもコントロールが可能な点が挙げられます。
リハビリテーション治療
運動療法によるストレッチは、筋の短縮や関節拘縮を予防します。
温熱療法は筋や靭帯、腱の柔軟性を向上させる他、疼痛の軽減や筋緊張の低下が期待でき、痙縮を緩和させます。
装具療法は痙縮により不良肢位となった四肢の拘縮を予防するために装具を使用します。装具を使用して変形矯正、痙縮抑制し、動作能力向上を図ります。
脊髄損傷における
痙縮の管理
痙縮は身体機能に影響を与えます。
痙縮の管理をしっかりしないと関節拘縮へとつながり、日常生活動作にも影響をきたすことがあるのです。
痙縮による日常生活の支障は以下のようなものが挙げられます。
痙攣による日常生活の支障の例
- 物を取ろうとしても腕が伸びない
- 握りこまれた指を伸ばそうとすると疼痛が出現する
- 着替え、入浴、オムツ替えなどで介助者が四肢を動かそうとすると疼痛が出現する
- 皮膚の軟化、湿潤により悪臭が生じる
痙縮の管理・治療にボツリヌス療法が挙げられますが、配慮が必要です。
薬剤の使用料が多すぎることにより、四肢の力が入りにくくなって体を支えにくくなることがあります。
リハビリテーションにおける管理は、骨粗しょう症のリスクを減らすために体重負荷と歩行訓練を継続的に行い、筋力強化も実施します。
身体的にも精神的にも健康状態を高めるために痙縮を上手く管理できるようにしましょう。
長期的な筋力維持
脊髄の損傷レベルによって麻痺の状態は変わってきます。
両下肢に麻痺がある場合、上肢でのプッシュアップ動作(上肢で床を押して臀部を浮かせ、移動・移乗する)、長座位(足を投げだして座る)の獲得が重要です。
長座位を保ってベッド上をプッシュアップで移動し、車いすに移乗する、車いすからトイレの便座へ移乗するなど、日常生活において必要な動作です。
そのため、日常生活動作を自力で行い続けていけるために、上肢の筋力トレーニングを継続し、筋力を維持することが必要となるのです。
手足の麻痺がある四肢麻痺の場合は、上肢の残存機能を使って食事、着替え、車いす駆動を自力で行えるような工夫が必要です。
残存機能の筋力が低下しないように継続的にトレーニングする必要性があります。
日常生活における
自立支援
障害を持って日常生活を送るには、本人の努力、家族の協力が必要です。
さらに、国や地方自治体の福祉制度を利用することも重要となります。
ここでは、福祉制度をご紹介していきます。
障害者総合支援法に基づく
サービス
障害者総合支援法は、障害のある方の日常生活や社会生活を総合的に支援するための法律です。
障害の有無に関わらず安心して暮らせる地域社会の実現を目的に制定されました。
障害者総合支援法に基づくサービスには以下の項目があります。
障碍者総合支援法に基づくサービス一覧
- 居宅介護
- 重度訪問介護
- 療養介護
- 生活介護
- 短期入所
- 施設入所支援
- 自立訓練
- 就労移行支援
- 就労移行支援A型
- 手が震える
- 就労移行支援B型
- 共同生活援助
代表的な福祉サービス
障害者自立支援法に基づくサービスの他に、脊髄損傷の方が利用する代表的なサービスをご紹介します。
代表的な福祉サービス一覧
- 補装具費の支給
- 日常生活用具給付等の支給
- 移動支援事業
まとめ
脊髄損傷の方は日常生活での自立度を高めるために、継続した筋力トレーニングにて機能・能力を落とさないように管理するのが重要です。
また、福祉サービスを上手く利用することも大切な選択肢として挙げられます。
ニューロテックメディカルでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
また、『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』をニューロテック®と定義し、生命の再生を促す再生医療を取り入れています。
再生医療だけではなく、リハビリも行うことで(神経再生医療×同時リハビリ™)、より治る力を高めていくのです。
ご興味のある方は、ぜひご連絡ください。
よくあるご質問
脊椎損傷のリハビリ期間は?
脊髄損傷による麻痺の回復は受傷後6か月〜1年に渡って見られますが、6か月を過ぎると大きな回復が見られなくなるため、リハビリ終了の時期とされています。
住宅環境の整備や移動手段の確保など、退院に向けての準備が必要となります。
脊髄損傷の慢性期とは?
受傷後3〜4か月経過すると慢性期になります。
排泄訓練など日常生活動作の訓練をして在宅生活に戻る時期です。
退院時期を見越して、自分にあった車いすを発注し、移動手段として利用できるように練習しておきましょう。
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<参照元>
・全国脊髄損傷者連合会:
https://zensekiren.jp/
・厚生労働省 障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス:
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000571840.pdf
・脊髄損傷者に対するリハビリテーション:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/30/1/30_58/_pdf/-char/ja
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