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脊髄損傷急性期のリハビリテーション

この記事を読んでわかること
脊髄損傷の概要
脊髄損傷急性期の管理と評価
脊髄損傷急性期のリハビリテーション


脊髄損傷は脊柱管の中にある脊髄が、何らかのきっかけで障害を受けてしまう疾患です。
後遺症としては手足の麻痺や膀胱直腸障害があり、生活・人生に大きな影響を与えます。
脊髄損傷では合併症を防ぎ、回復期へ繋ぐことが重要です。
この記事では、脊髄損傷急性期のリハビリテーションについて解説します。

脊髄損傷とは

脊髄損傷とは
脊髄は脳から末梢神経の間を繋ぐ中枢神経の一つです。
外部からの力から守られるために、脊椎の中の脊柱管という場所に入っています。
この脊髄が何らかの原因により障害を受けた状態を脊髄損傷と呼びます。
脊髄損傷の原因はかつては交通事故や労働災害が多いと報告されていました。
最近では、高齢者が転倒などの比較的軽微な外力で起こる「中心性脊髄損傷」が増えています。
他の原因としては感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患などがあります。
脊髄損傷の分類は様々ありますが、損傷された部位以下の機能が全て停止する「完全麻痺」か、一部の機能が残存する「不全麻痺」かの分け方が多いでしょう。

初期治療と合併症・リハビリテーション

脊髄損傷急性期にはまずは循環動態の安定化が行われ、並行して患部の安静と病変の安定化を目指します。
外傷性の場合、手術治療が用いられることがありますが、時期、重症度、術式に明確な指標というものはありません。
手術をしたからといって神経機能が完全に回復するわけではありませんが、脊椎が安定化することにより早期にリハビリテーションを行うことができます。
安静が重要といってもただベッドに寝ているだけでは、様々な合併症を起こしてしまいます。
合併症の中で多いものは尿路感染症(脊髄の障害で排泄機能が悪くなる)、肺炎(呼吸の機能が弱くなり分泌物を出せない、人工呼吸の使用など)、褥瘡(感覚障害がり、自分でも動かせないので床ずれを作ってしまう)、関節拘縮(動かないことで関節が固まってしまう)などがあります。
これらの合併症を予防するためには、「安静にしつつもリハビリテーションを行う」という相反することを行う必要があります。
急性期では患者の状態(特に呼吸・循環)が変わりうるので、適切な評価を行い実施する必要があります。

呼吸訓練と早期離床の重要性

脊髄損傷では損傷の部位によって、呼吸筋(横隔膜、肋間筋など)に麻痺が起こります。
人体最大の呼吸筋である横隔膜の神経支配は頚髄3-5なので、それより高位の脊髄損傷では呼吸がうまくできなくなる可能性があります。
また、脊髄損傷急性期では呼吸筋力低下に加え、自律神経障害により気道分泌物の増加や肺水腫が起こりやすい状態です。
咳をしようにも体幹の筋力も弱いのでうまく咳ができません。
呼吸状態が安定しないと、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)や人工呼吸器を使用することになります。
リハビリテーションでは呼吸理学療法を行い、少しでも機能を維持できるように努めます。
呼吸状態が安定した場合は離床訓練を行います。
早期離床により、座位・立位バランス訓練になり、機能の低下に抗うことができます。
また、褥瘡の予防や起立性低血圧への耐性の獲得も期待できます。

残存機能の評価と予測

リハビリテーションを進めていくには、まずは評価を適切に行わないといけません。
急性期では何よりも呼吸・循環の評価です。
呼吸数、脈拍、血圧が安定しているか、体位の変化や刺激によって変化がないかを確認しましょう。
脊髄損傷では残存機能が予後に直結します。
最も使用されているものはFrankel分類とASIA Impairment Scaleです。
いずれも運動機能、感覚機能で分類します。
残存高位により獲得動作が予測できます。
例えばC5損傷であれば電動車椅子となる可能性が高いですが、C6損傷では移乗動作が期待できます。
C7損傷になれば車椅子を用いて日常生活動作が自立できるかもしれません。予後を予測するためにもまずは評価を正確に行いましょう。

まとめ

この記事では脊髄損傷急性期のリハビリテーションについて解説しました。
脊髄損傷は手足の麻痺や膀胱直腸障害など、例え軽微であってもその後の人生に大きな影響を与えます。
まずは転倒や事故に気をつけつつ、受傷してしまった際には早期に適切な治療を受けるべきです。
中には後遺症に悩み、少しでも後遺症を減らしたい方もいるでしょう。
かつてはリハビリを地道に行うしかなかった脊髄損傷も、近年では再生医療の発展により根本的な治療も期待されています。
当院では脊髄損傷後遺症・脳卒中後遺症の方に対し、ニューロテック®という『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』を行っています。
その中のリニューロ®は、同時刺激×神経再生医療、骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリで構成され、「狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める」ことを目標とします。
今後も当院では医療の発展に注目しながら、目の前の患者さんの後遺症を減らすための工夫を行って行きます。

よくあるご質問

脊髄損傷のリハビリ期間は?
脊髄損傷急性期では入院初期からリハビリテーションが始まります。回復期リハビリテーション病棟の入院期間は重度の頚髄損傷では180日、それ以外では150日が上限とされています。それ以降も目標に合わせてリハビリの期間は続きます。
脊髄損傷急性期とは?
脊髄損傷の急性期は、神経原性ショックで循環動態が不安定だったり、脊椎の不安定性があったりすることで全身管理が重要です。肺炎や尿路感染症、褥瘡などの合併症の管理も行われます。受傷後2-3週間ほどを急性期と言う場合が多いですが、具体的な期間は明示されていません。

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<参照元>
・脊髄外科の急性期治療:
https://nsmc.hosp.go.jp/Journal/2017-7/SMCJ2017-7_review02.pdf
・神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーションガイドライン:
https://www.jarm.or.jp/wp-content/uploads/file/member/member_publication_isbn9784307750400.pdf

<外部サイトの関連記事>脊髄損傷に対するリハビリテーション




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