・感覚障害に対するリハビリの取り組みについて
・運動機能障害の改善に向けた具体的なプログラム
・身体だけでなく心理的な支援の重要性について
右視床出血は左半身の感覚障害や運動機能障害が生じ、日常生活に大きな影響を及ぼします。
この記事では感覚再教育や巧緻運動トレーニングなどの具体的なプログラムや心理的な支援の重要性とそのための環境づくりについてご紹介しています。
日常生活を快適にするための具体的な方法を探している方はぜひ参考にしてみてください。
感覚障害を改善するためのリハビリの取り組み
視床は身体のあらゆる部位の感覚情報を大脳に伝える中継地点であり、視床出血などにより障害が生じると感覚障害(右視床出血の場合は左半身の感覚障害)を引き起こします。
- 物に触れても感じない感覚鈍麻やしびれ
- ピリピリ感のような痛みの異常
- お湯や冷水の温度差がわからない温度感覚の異常
- 手足を動かしたときにどの程度動かしているのかわからなくなる深部感覚の低下
などが生じます。
このような感覚障害に対するリハビリテーションでは「感覚再教育」を行っていきます。
表面の材質の異なる物体をいくつか用意し、目をつぶりながら物体に触れてそれぞれの材質の違いを比べていき視覚に頼らず触覚のみでそれらを区別する練習をしていきます。
また、ボールの中にお米と異なる物体をいくつか入れておき、目を閉じた状態でボールの中に手を入れてお米とは異なる物体を探して取り出す練習をします。
温度感覚の訓練として、冷たいおしぼりと温かいおしぼりを交互に触れてその温度差を繰り返し確認していきます。
着替えや入浴、食事などの日常生活の中でも感覚を入れていくような工夫ができます。
例えば着替えの際に肌ざわりの異なる衣服を選ぶことで感覚の認識を促進させたり、食事中に異なる形状の食器を使用したり温かいものや冷たいものを入れた容器から感じる温度差を確認したりすることができます。
運動機能回復を目指した具体的なプログラム
視床出血では出血範囲が広がることで感覚障害だけでなく運動機能を担う部分にも影響が及び運動機能障害が生じる可能性があります。
感覚と同様に右視床が障害されると左半身に運動麻痺やスムーズな動きが難しくなる運動失調といった運動機能障害が生じます。
- 手や指の動きの回復を促すためにグーパー運動や指を1本1本動かす指の独立運動
- 巧緻運動トレーニングとしておはじきやビー玉など小さな物をつまむ練習
- コインを指で拾う練習
- 箸やスプーンを使う練習
などを行います。
筋力強化のために柔らかいボールをつぶしたりセラバンドを使った手のトレーニングなども有効です。
後遺症として歩行の不安定さやバランス能力の低下が見られる場合は下半身の筋力強化と歩行訓練が必要となります。
下半身の筋力強化やバランス訓練として片脚立ちの練習やスクワット、座った状態で膝を伸ばしたり足を持ち上げる運動などを行います。
歩行訓練は歩幅を意識して少しゆっくり歩く練習や鏡を使って歩行時の姿勢の修正などを行います。
運動失調に対しては、メトロノームや音楽に合わせて身体を動かすリズム運動やボールキャッチ、卓球、風船バレーなど目と手の協調性を高めるような運動が効果的です。
日常生活動作の改善に向けて服のボタンを閉めたりジッパーを上げたりする練習や歯磨き、食事の練習、片手でできる動作を増やすこと、補助器具をしっかり使えるようにする練習などを行います。
日常生活に復帰するための心理的支援の重要性
身体が思うように動かないことへのストレスや家族や介護者に負担をかけていることへの罪悪感などにより心理的な負担が大きくなり、気分の落ち込みやうつ症状が出現することもあります。
そのため、身体のケアだけでなく心理的なケアも非常に重要となります。
患者が前向きにリハビリに取り組み、日常生活に復帰するためにポジティブな声かけや患者自身がリハビリの成果を感じ、成長していることを意識できる環境が必要となります。
できることに目を向け、できたことに対して褒めたり、歩きやすい部屋作りや食べやすい食事の工夫など自分でできることを増やせるような家族のサポートが重要となります。
また、精神的な不安や落ち込みが強い場合には臨床心理士や心理カウンセラーなどの専門家によるカウンセリングを受けたり、リハビリ経験者との交流会に参加したりなど同じ病気を経験した人と話をすることで自分だけではないことに気が付き不安を解消することができます。
まとめ
視床出血では感覚障害や運動機能障害などの後遺症により、日常生活に大きな影響を及ぼします。
そのため、適切なリハビリと家族や周囲のサポートが非常に重要となります。
また、これまでは一度損傷した脳細胞や神経細胞はもとに戻ることはないとされており、主な治療はリハビリテーションで機能回復を目指すことでした。
しかし、最近では損傷した神経自体を修復させて機能回復を目指す再生医療が注目されています。
「ニューロテックⓇ」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んに行われています。
神経の再生を促す再生医療とリハビリを組み合わせた「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、今まで難治であった視床出血による後遺症の改善が期待できます。
再生医療も治療法の選択肢の1つとして考えられます。
よくあるご質問
- 右視床出血の後遺症は?
- 左半身の感覚障害やピリピリとした痛み、左の上下肢がうまく動かせなくなる運動麻痺や指先での細かな動きが難しくなる巧緻運動障害、バランスが崩れやすく転倒のリスクが高まる歩行障害などがあります。
- 視床出血の治療法は?
- 急性期では血圧管理のために降圧剤や止血剤などの点滴による内科的な治療が行われます。
視床は脳の深部のため手術などの外科的治療は限定されます。
急性期以降は理学療法や作業療法などのリハビリが中心となります。
<参照元>
・段階的な目標設定の共有が視床出血後の依存的行動を変容させた一症例|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/advpub/0/advpub_11871/_pdf
・感覚障害へのリハビリテーション|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kochiotjournal/1/0/1_37/_pdf
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