・前頭葉が担う感情制御や記銘力、思考力、運動機能がわかる。
・脳卒中後の前頭葉障害がもたらす影響がわかる。
・前頭葉障害に対するリハビリテーションと再生医療の重要性がわかる。
前頭葉は感情制御や記銘力、思考力、運動機能の司令塔として重要な役割を担っています。
しかし、脳卒中後、前頭葉が損傷すると、感情不安定や思考力低下、運動障害が発生し、患者の生活の質に大きな影響を及ぼします。
そこで、リハビリテーションや再生医療の適切なサポートにより、機能回復と生活自立の向上が期待されています。
前頭葉の役割として感情制御と記銘力とは
前頭葉は脳の中でも高度な機能を担う部位であり、感情制御、意志決定、記銘力といった人間の重要な認知機能の基盤を形成しています。
特に感情制御の面では、前頭葉が脳全体の感情反応を調整し、社会的な状況やストレスに応じて適切に対応する能力を支えています。
前頭葉が健全に機能している場合、怒りや不安を抑制し、喜びや共感といった感情をバランスよく表現することが可能です。
一方、記銘力とは、情報を長期的に記憶に保存し、必要なときに呼び出す能力です。
日常生活や仕事、学習において重要な役割を果たすこの能力も前頭葉によって支えられています。
脳卒中が前頭葉に影響を与えた場合、これらの感情制御や記銘力が著しく低下することが多く、患者は不安定な感情を抱えたり、新しい情報を覚えにくくなったりすることがあります。
また、前頭葉が損傷を受けると、他人との対話や社交的な場面で適切な反応を示すことが難しくなり、これが患者のQOL(生活の質)に影響を与えることもあります。
そのため、こうした前頭葉の役割を理解することは、脳卒中後のリハビリテーションにおいても重要な要素といえます。
脳卒中による前頭葉障害が引き起こす思考力と発語の問題
脳卒中によって前頭葉が損傷すると、思考力や発語にも顕著な影響が見られることがあります。
前頭葉は思考力に関与し、物事を論理的に考え、複雑な状況を分析し、優先順位を判断する能力を支えています。
思考力が低下すると、意思決定が困難になり、日常生活で些細なことにも迷うことが多くなります。
また、情報の処理が遅くなり、判断を誤る可能性も増加します。
発語に関しても前頭葉は重要な役割を果たしており、発語失行や失語症といった症状が現れる場合があります。
発語失行とは、適切な言葉を思い浮かべられない状態を指し、話したい内容があってもスムーズに言葉が出てこないことが特徴です。
また、失語症は、言語を理解し話す能力が低下する状態であり、これによって患者は他者とのコミュニケーションに困難を感じます。
特に言語は社会的なつながりの基本的な手段であるため、発語の障害は患者本人だけでなく家族や周囲の人々にも影響を及ぼすことが多いです。
こうした症状に対しては、言語療法や認知療法といったリハビリが効果を示すことがあり、適切なサポートを受けることでコミュニケーション能力の回復を目指すことができます。
身体運動への影響とそのリハビリテーションの重要性
脳卒中によって前頭葉が損傷を受けると、感情制御や思考力だけでなく、運動機能にも影響が現れることがあります。
特に前頭葉の運動野は、身体の動きを計画し、それを具体的な動作として実行するための司令塔としての役割を担っています。
この運動野が障害されると、手や足を動かしにくくなる、姿勢を保つのが困難になるといった運動障害が見られることがあります。
また、バランス感覚や筋力も低下し、基本的な日常生活動作(ADL)に支障をきたすことが少なくありません。
リハビリテーションはこのような運動機能の回復に不可欠です。
運動療法や物理療法などが用いられ、筋力や柔軟性の向上を目指して計画的にリハビリが行われます。
また、作業療法を取り入れることで、日常生活の自立度を向上させる訓練も行われ、患者が再び自分で生活できるようになることが目指されます。
さらに、前頭葉が持つ計画や動作の指示を行う能力の回復も視野に入れた訓練が重要です。
特に、認知的な運動制御を含むリハビリテーションは、患者の意欲を高め、再び社会に適応するためのサポートとして役立ちます。
まとめ
脳卒中による前頭葉障害は、感情制御、記銘力、思考力、発語、運動機能といった多方面にわたる影響をもたらし、患者の生活に深刻な制約を与えることがあります。
前頭葉は、私たちが日々の生活を送る上で必要不可欠な感情や思考、運動の制御において中心的な役割を果たしており、その障害は患者のQOLに重大な影響を及ぼします。
脳卒中のリハビリにおいては、早期の診断と継続的なサポートが不可欠であり、適切な治療とリハビリテーションによって、患者は少しずつ機能の回復を目指すことができます。
医療スタッフや家族の支援のもとで、前頭葉障害に対する適切なアプローチを行い、社会復帰に向けたプロセスを進めることが、患者の心身の健康にとって重要な要素となるでしょう。
前頭葉などを含む脳の大切な部分が障害を受けてしまう脳卒中後にも、リハビリテーションと再生医療を組み合わせることで、その機能改善に期待が持てます。
当院ニューロテックメディカルでは、『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』を、ニューロテック®と定義しました。
そして、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』を、リニューロ®と定義しました。
リニューロ®は、同時刺激×神経再生医療®にて『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』です。
また、その治療効果を高めるために骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリ®の併用をお勧めしています。
ご興味のある方は、ぜひ一度当院までご連絡ください。
よくあるご質問
- 前頭葉の機能低下で感情が抑えられないのはなぜですか?
- 前頭葉は感情を調整し、抑制する機能を持つ部位であり、社会的な状況やストレスに応じた適切な反応を導きます。
前頭葉の機能が低下すると、これらの調整が難しくなり、怒りや不安といった感情が制御しづらくなるため、感情が爆発しやすくなるのです。 - 前頭葉が障害されるとどうなるか?
- 前頭葉が障害されると、感情制御や記憶力、意思決定能力が低下し、適切な判断や社会的な反応が困難になります。
また、発語や身体の運動機能にも影響が現れ、生活の質に大きな影響を及ぼすことが多いです。
<参照元>
・前頭葉の臨床神経心理学.高次脳機能研究.2016.36(2);163-169.|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/36/2/36_163/_pdf
・Waugh CE, Lemus MG, Gotlib IH. The role of the medial frontal cortex in the maintenance of emotional states. Soc Cogn Affect Neurosci. 2014 Dec;9(12):2001-9. doi: 10.1093/scan/nsu011. Epub 2014 Feb 3. PMID: 24493835; PMCID: PMC4249480.:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4249480/
・Pirau L, Lui F. Frontal Lobe Syndrome. [Updated 2023 Jul 17]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024 Jan-. Available from:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK532981/
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