・早期から行うリハビリテーションの内容と目的
・近年でエビデンスの高いリハビリテーション方法
・リハビリテーションの種類と効果
脳梗塞になると片麻痺や感覚障害、高次脳機能障害などの障害が現れます。
近年ではリハビリテーションを早期から開始し、できるだけ継ぎ目のないリハビリテーションを継続して行うことが重要と言われています。
この記事では脳梗塞のリハビリテーションを急性期での関わりから最新のエビデンス、リハビリテーションの種類と効果を解説します。
目次
早期リハビリで命を繋ぐ!脳梗塞からの回復を加速
脳梗塞を発症すると片側性に運動麻痺、感覚障害、意識障害、失語症や注意障害を含む高次脳機能障害などの様々な症状が出現します。
脳梗塞急性期のリハビリテーションは、臥床している時間が長くなることで起きる合併症や機能低下を防ぐことと、できるだけ早い時期から離床を行って脳機能の回復を目指すことが目的となります。
脳梗塞を発症してすぐの急性期では命に関わる合併症が起きやすいとされています。
特に危険な合併症は誤嚥性肺炎と深部静脈血栓症です。
誤嚥性肺炎とは嚥下機能が低下することによって発症する肺炎で食事を誤嚥する場合と唾液を誤嚥する場合がありますが、脳梗塞後の方では後者が多いとされています。
誤嚥性肺炎は急性疾患の中でも致命的な疾患のうちの一つであり、死亡率は20〜40%と言われています。
脳梗塞急性期ではリハビリテーションを行い、少しでも早い時期からベッドを離れ車椅子に乗車する時間を確保することで誤嚥性肺炎の発症率を下げることができます。
また、言語聴覚士が嚥下機能を評価し、嚥下訓練を行うことも非常に重要です。
深部静脈血栓症は下肢などの静脈内に血栓ができてしまう疾患で別名エコノミークラス症候群として知られています。
静脈内にできた血栓が血流に乗り、肺に達してしまうと肺塞栓症を発症し致命的となります。
脳梗塞患者では発症直後に下肢を動かす頻度が減ってしまうことが深部静脈血栓症の発症のリスクとなります。
そのため、リハビリテーションで早期から歩行練習や下肢の運動を積極的に行うことが発症予防に重要になります。
最新技術で可能性を広げる!脳梗塞リハビリの最前線
脳梗塞のリハビリテーションは急性期病院から開始し、回復期病院や退院後も途切れなく行います。
近年の研究で最もエビデンスが高い治療は課題指向型トレーニングとされています。
課題指向型トレーニングとは目的とする動作を反復して練習することで動作能力の向上を目指すトレーニングのことを言います。
脳梗塞によって日常生活動作が困難になった場合は、理学療法士や作業療法士と一緒に日常生活動作のトレーニングを反復練習することが重要になります。
例えば、理学療法士と一緒に早期から歩行練習を開始したり、作業療法士と一緒に更衣動作の練習を行うことなどが挙げられます。
特に早期から歩行練習を開始することが将来的に歩行を再獲得するために重要と言われており、急性期病院に入院中から必要であれば装具などを使用して歩行練習を行います。
リハビリで健やかな毎日を!再発予防と生活の質向上
リハビリテーションは入院中に理学療法士などと一緒に機能訓練を行うイメージがありますが、日常生活の中で運動などを行うこともリハビリテーションに含まれます。
退院した後に活動量が落ちてしまったり不摂生な生活を行ってしまうと、リハビリテーションで改善した身体機能が低下してしまうだけでなく、脳梗塞を再発してしまうリスクも上がってしまいます。
そのため、退院した後も再発予防や生活の質を向上するためにリハビリテーションを継続することが重要です。
脳梗塞後に自宅で手軽にできるリハビリは散歩です。
毎日の生活の中でどれだけ活動できているかが筋肉量と比例しているとされており、散歩は道具を使わずに行える運動のため、おすすめです。
また、下肢の筋力を増やすために筋力トレーニングを行うことも勧められており、自宅内でスクワットや立ち座り運動を行うことも重要です。
このように、普段の生活の中でも可能な運動を行うことで体力や筋力を上げることができ、生活の質を上げることができます。
脳梗塞のリハビリで何を期待できる?効果と種類
脳梗塞のリハビリには主に理学療法、作業療法、言語療法の3つがあります。
理学療法は基本動作という移動に関連する動作の訓練を中心に行います。
具体的な内容は下肢を中心とした筋力トレーニングや歩行練習などです。
理学療法では身体機能を改善することや運動学習という脳内の神経ネットワークを再構築する効果があり、移動動作の改善が期待できます。
作業療法は応用的動作能力、つまり生活で使う動作の改善を目的に行います。
訓練内容は生活動作練習や作業活動を通じた認知面や高次脳機能へのアプローチを行います。
作業療法を行うことで認知機能や高次脳機能、生活で使用する動作の能力の改善が期待できます。
言語療法は脳梗塞の症状である嚥下障害や失語を中心とした高次脳機能障害の改善を目的に行います。
失語症のトレーニングでは言葉の認識や文章の組み立ての練習を行ったり、嚥下訓練では実際に食物を使用する直接訓練や食物を使わずに咀嚼・嚥下に関わる筋肉を鍛える関節訓練などがあります。
このようなリハビリを必要に応じて行うことで生活の質の改善を目指すことが重要です。
まとめ
この記事では脳梗塞になった後のリハビリについて解説しました。
発症後すぐにリハビリを開始し、目指すゴールに辿り着くまで継続してリハビリを行うことが重要です。
脳梗塞で神経を損傷してしまった後の脳の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄の治る力を高める治療を行なっていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。
よくあるご質問
- 脳梗塞のリハビリの効果は何ですか?
- 脳梗塞のリハビリは生活の質を上げるために行います。
脳梗塞後は様々な症状が起こりますが、超急性期以外での直接的な治療はありません。
リハビリを行うことで症状を改善し生活動作を行いやすくする効果が期待できます。 - 脳梗塞のリハビリには段階がありますか?
- 脳梗塞を病期で分けると急性期、回復期、生活期があります。
急性期では命に関わる合併症を予防し早期からの離床を目指し、回復期では機能の回復と動作の再獲得を行います。
生活期では生活動作の定着と再発予防を目的にリハビリを行います。
<参照元>
・脳卒中治療ガイドライン:https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_07.pdf
・脳卒中患者に対する課題指向型アプローチ:https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/45S1/0/45S1_31/_pdf/-char/ja
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