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iPS細胞による再生医療の現状

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2019.4.14

2006年に生まれた新しい多能性幹細胞のiPS細胞は、再生医療を実現するのに重要な役割を果たすと期待されています。そんなiPS細胞を使った再生医療の現状を紹介します。

人工多能性幹細胞(iPS細胞)

皮膚などの生体の細胞にいくつかの遺伝子を人工的に導入して作られた多能性幹細胞の事を云います。Induced Pluripotent Stem cell 略してiPS細胞と呼ばれています。培養して増殖できるので、適当な因子を加えることなどで、身体を構成するほとんど全ての細胞になることが出来ます。多能性幹細胞としては、受精卵が細胞分裂した胚盤胞の内部細胞塊から取り出して培養した胚性幹細胞がありました。これがES細胞と呼ばれるものですが、受精卵を操作すると云う倫理的問題、免疫拒絶が避けられない技術的問題などで臨床には利用し難かったのです。そこで、体細胞を初期化して多能性を持つ細胞を作る技術が研究されました。その結果、生体から採取した線維芽細胞に、Sox2、Oct3/4、Klf4、c-Mycという4個の遺伝子(=ヤマナカファクター)を導入すれば、胚盤胞と同じように初期化された多能性を持った細胞になることを2006年に発見しました。その後の研究も進み、適当な培養法、適当な因子次第で、心臓、神経、膵臓、網膜などいろんな細胞に分化でき、自家移植なら拒絶問題もクリアできるので、再生医療の決め手として注目を集めているのです。またその他に、患者さんからのiPS細胞を使って、病因の解明や効果のある薬品の開発にも役立つと期待されています。

再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト

CiRA(サイラ:京都大学iPS細胞研究所)では、「iPS細胞の臨床応用」を目的として研究活動を行っています。将来の再生医療を考え、品質保証されたiPS細胞を早く提供できるように、2013年から再生医療用iPS細胞をストックするプロジェクトが進められています。
プロジェクトでは、HLA(Human Leukocyte Antigen:ヒト白血球型抗原)型を免疫拒絶反応が起きにくい組み合わせ(ホモ接合体)で持っている健康なボランティアに細胞を提供してもらって、医療用のiPS細胞を作ります。予め安全性を確認し品質保証されたiPS細胞をストックして、必要な時に国内外の医療・研究機関に素早く提供できるようにすることを目的にして凍結保存すれば、患者さんの待機期間は最短1ヶ月、費用は5分の1程度に抑えることが出来ます。
HLAには膨大なバリエーションがあり、一致する確率は極めて低く、効率よく一致させるためにはHLAホモドナーからの細胞作製が必須です。日本人で最頻度のHLAタイプのホモドナー1人からiPS細胞を作ると、日本人の20%をカバー出来ます。違うホモで作ると80%、140人で95%がカバー出来ます。最初の目標は50%のカバーですが、数十人のホモドナーを見つけるには数十万人を調べなければならないので、臍帯血バンクや日本赤十字社、骨髄バンクなどの外部との連携が進められています。

iPS細胞を使った再生医療

難聴:米スタンフォード大学ではマウスを使って、難聴の原因と云われる内耳の中の音を感じ取る、有毛細胞の再生に成功したと報告されています。次は人間での研究ですね。

加齢黄斑変性:2014年に患者さんの網膜に、自身の細胞から作ったiPS細胞のシートを移植しました。この時は安全性確認に11カ月を要し、1億円の費用がかかりました。その後、他人の細胞からのiPS細胞で作った網膜の細胞を溶かした液を、患者さんの目に入れて細胞の再生を図る理化学研究所の臨床研究が承認されて、医療応用に向けて大きな一歩になっています。

パーキンソン病:京大iPS細胞研究所では、神経細胞になる前の細胞をiPS細胞で作って、移植する治療が期待されています。高純度のドパミン産生神経細胞の作成に成功し、サルのパーキンソン病モデルで効果と安全性を検証中で、臨床研究の申請に進める予定です。

iPS細胞による輸血:血小板の大量培養システムを確立して、血小板の元の巨核球、赤血球前駆細胞作業にも成功したので、早期に臨床研究に入ると思われます。血小板や赤血球も放射線を当てることで、増殖性の残った細胞を全て殺し安全性を確保できます。急速な高齢化により今後10年以内に、献血だけでは輸血が補えなくなると予想されるので、この献血を補うアプローチは緊急の課題です。

糖尿病:iPS細胞からインスリン産生細胞の作成に成功し、マウスへの移植では血中のヒトC-ペプチドの増加が確認されています。糖尿病の再生医療実現を目指します。また、iPS細胞から膵臓を丸ごと作ることを目指し、現在、膵臓のオルガノイド(※)作成に成功し、今後の発展に期待がかかります。
※オルガノイド:3次元的に試験管内で作られた臓器。

心筋再生治療:大阪大学では、すでに骨格筋芽細胞シートで重症心不全に好成績を挙げていますが、iPS細胞由来の心筋細胞シートでも大阪大学と共同で作成に成功し、動物を使っての改善が示されています。さらに心筋、内皮細胞、血管壁細胞で構成された心臓細胞シートの作成にも成功して、動物での有意な心機能の改善が確認されています。

関節疾患:関節軟部疾患への再生医療として、ヒトiPS細胞から軟骨細胞作製に成功しています。これにより、外傷等比較的欠損が小さい症例治療に期待がかかります。

筋ジストロフィー:筋ジストロフィー患者由来のiPS細胞から骨格筋幹細胞を作り、免疫不全マウスへの移植で病態再現に成功し、今後の臨床応用が期待されます。

iPS細胞によるガン免疫の若返り:加齢と伴にT細胞などの免疫細胞が疲弊すると、ガン細胞の増殖や転移が進みます。そこで、ガン細胞を攻撃する特定のT細胞を採取し、その細胞からiPS細胞を誘導・増殖させて、攻撃特性を持ったT細胞を再作成することに成功しました。ガンに対する将来的治療として期待されます。

その他のiPS細胞を使った再生医療の臨床応用への動き

病名 所在地
角膜疾患 大阪大学 2019年度開始予定
脊髄損傷 慶応義塾大学 2019年開始予定

山中伸弥教授のノーベル賞受賞後、再生医療の分野は政府の成長戦略に採用されて、追い風が吹き、規制緩和も進んでいます。さらなる治療の進展が期待されます。

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