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再生医療の新時代を拓く「サイフューズ」社

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2019.8.31

 ヒトの培養した細胞を、いろんな臓器に再生させる再生医療が進んでいます。でも、広く実用化されるには、まだまだ多くの課題があります。その一つに、培養した細胞からどうやって立体的な構造を持った組織に作り上げるかと云うことでした。その答えの一つが、細胞用3Dプリンターを使った新技術の開発にありました。今回はその開発に挑戦している、「サイフューズ」社の技術を紹介しましょう。

サイフューズ社

2010年設立のバイオベンチャー企業「サイフューズ」社は、創業以来「細胞だけで」立体的な組織・臓器をつくって、再生医療・創薬分野に貢献することを使命として事業を進めてきました。三次元細胞積層システム機器「レジェノバ」を使って、細胞のみで作られた細胞塊(スフェロイド)を立体的に積層する独自の技術を開発しました。

足場材なしの立体構造の実現

自然では再生・治癒出来ない細胞や組織、臓器などを人工的に再生し、その機能を回復させるのが再生医療でした。既に承認されている再生医療製品は、患者さんから採取した骨髄液中の間葉系幹細胞を体外培養・増殖させて、再び体内に戻す自己骨髄由来間葉系幹細胞や、シート状に培養した細胞を使った自己表皮由来細胞シートなどがありました。この液状、シート状に続いて期待されるのが、立体構造を持った組織の再生でした。
週に複数回の血液透析を受ける腎臓病の患者さんの中には、自身の血管への負担を減らす為に樹脂製の人工血管を埋め込む方がいらっしゃいます。でもそれは、体内に異物を入れることになるので、拒否反応や感染症のリスクを抱えます。そこで、自己細胞のみで出来た血管を立体構造で実現する意義が生まれたのです。
これまでにも立体構造の実現に向けて、いろいろな技術が開発されました。でも、細胞を支える足場材(スキャホールド)として、動物由来の材料が別途必要であったり、型を使って積み上げた細胞には酸素や栄養が行き届かず、細胞が壊死するなどの問題がありました。
そこで「サイフューズ」社では、バイオ3Dプリンターを使って、細胞100%で任意の立体構造を作り上げる画期的な方法を開発したのです。

剣山メソッドの開発

足場材や型なしでの立体構造を可能にしたのが、「サイフューズ」社の創業者でもある佐賀大医学部の中山教授の開発した「剣山メソッド」でした。特定のプレート内で同種の細胞は培養すると、細胞は集まって塊になります。この細胞塊を、生花の剣山のように設置した細い針に積み立てて、お望み通りに成形して行くのです。そのまま熟成させると細胞同士が融合して、剣山を引き抜いても、立体構造は維持されるのです。尚、積層された細胞間には適度な隙間があるので、酸素や培養液が内部まで届いて、細胞は生き続けることが出来ます。
始めは細胞塊を一つずつ手作業で剣山に積み上げ、数十時間かけて立体構造にしていましたが、国や渋谷工業などのメーカー支援により、バイオ3Dプリンターを使っての自動化に成功したのです。でも、「針」の開発には苦心したようで、細胞塊を傷つけない細さと、いくら使っても、たわみのない強度を兼ね備えた「針」が要求されました。
一般的な人工血管では、血管に空いた穴を自然にふさげることは出来ませんが、バイオ3Dプリンターで作った血管なら、指で押さえるだけで自然に止血出来ることも分かっています。また、患者さん自身の細胞を培養して使えば、拒否反応の心配もないので、安心して高品質なものを提供できるのです。

より良い機器の開発

開発されたバイオ3Dプリンター「レジェノバ(Regenova)」は、細胞塊を1つずつ吸い上げて、剣山の目的位置まで繰り返し運び、1層ずつ積み上げて行きます。これにより、サイズの均一な細胞塊を使うことで、精密な立体構造物が作られます。また、設置スペースやコストを気にせずに、もっと手軽に使えるようにと、小型化され積層の自由度を高めた、「スパイク(S-PIKE)」も開発され、研究者のニーズに答えています。

創薬から治療まで幅広い利用

血管再生については令和元年中に臨床試験を開始予定、軟骨再生についてはすでに臨床試験が始まり、神経再生などではいろんなプロジェクトが進行中です。でも、再生組織の実用化には臨床試験などが必要なので、まだ長期的な目標となっています。一方、創薬支援のツールとしての立体細胞の利用は、より短期的な実用化が期待されます。薬が細胞に与える影響を評価する際に、立体構造の細胞はより生体に近い反応を示すことが分かっています。「サイフューズ」社では、肝臓の細胞から作ったミニ肝臓を毒性の評価などに使用する研究が進められています。薬の安全性試験の精度向上が進めば、創薬のコスト低減や、開発期間短縮につながるでしょう。

いかがでしたか、細胞を意味する「Cyto」と融合を意味する「fusion」に由来する社名「フュージョン」には、生物学と工学の融合による技術革新への願いが込められているのです。

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